ダンスと運動神経は関係ない?運動が苦手な子がダンスで経験できることと始め方

「うちの子は運動神経がよくないから、ダンスは難しいかも」「ダンスをすると運動神経がよくなるって本当?」。ダンスの習い事を考えるとき、運動神経のことが気になる保護者の方は少なくありません。この記事では、まず「運動神経」という言葉がもともと何を指しているのかを確かめたうえで、ダンスでよく使う力とあまり使わない力、運動が得意でない子がつまずきやすいところとその手助け、そして「ダンスで運動神経がよくなる」と言えるのかどうかを整理しました。言い切れることと、言い切れないことを分けて書いています。

「運動神経」とは?もともとは神経の名前

「運動神経」は、もともと体の中の神経の名前です。精選版 日本国語大辞典では、「中枢から筋肉に興奮を伝え、身体運動の調節をつかさどる末梢神経」と説明されています。脳や脊髄から出た指令を筋肉に届ける「伝達係」のような神経のことです。

同じ辞典には、続けて「普通は、事に応じて反射的に体を動かしたり、種々の運動を巧みにこなしたりする能力の意で用いられる」とも書かれています。デジタル大辞泉でも「スポーツや技能などを巧みにこなす能力」という意味が載っています。つまり、日常会話で「運動神経がいい」と言うときは、神経そのものではなく、「体をうまく動かす力」全体を指しているわけです。

神経としての運動神経に「よい・悪い」があるわけではない、と説明する解説記事もあります。この記事でも、ここから先の「運動神経」は、日常で使われる「体をうまく動かす力」の意味で使います。

日常で言う「運動神経がいい」の中身

「運動神経がいい」と言われる子を思い浮かべると、足が速い、ボールを遠くまで投げられる、初めてのスポーツでもすぐにこつをつかむ、などいろいろなタイプがいます。実際には、いくつかの違う力が合わさって「運動神経がいい」と見えていることが多いものです。

  • 力や速さ:速く走る、高く跳ぶ、強く投げる
  • バランス:片足で立つ、不安定な場所でも姿勢を保つ
  • タイミング:飛んでくるボールに合わせて手を出す、音や合図に合わせて動く
  • まねる力:人の動きを見て、同じように体を動かす
  • 体の感覚:自分の体が今どうなっているかを感じ取り、イメージ通りに動かす

聖カタリナ大学の松本行矢先生(体力測定評価学・体力トレーニング学)は、大学の学問紹介の記事で、運動神経を「イメージ通りに動ける力」としてとらえ、足が速いことと運動神経がいいことは同じではない、という話をしています。どの力が得意かは子どもによって違うので、「運動神経がいい・悪い」と一言でまとめないほうが、子どもの得意・不得意が見えやすくなります。

ダンスでよく使う力、あまり使わない力

上の5つの力を、ダンスに当てはめてみます。

ダンスでよく使う力

  • タイミング:音楽の拍に合わせて、動き始めたり止まったりする
  • まねる力:先生の動きを見て、同じ形・同じ向きで動く
  • 体の感覚:首だけ、胸だけ、腰だけといった、体の一部を分けて動かす
  • バランス:ターンや片足立ち、止まったときのポーズ

ダンスではあまり問われない力

  • ボールや相手の動きに素早く反応する力
  • 相手より速く走る、遠くへ投げるといった、記録や勝ち負けにつながる力

ダンスは、決まった振り付けを、決まった音楽に合わせて踊ることが多い習い事です。次に何が起きるかが分かっている中で動くので、ボールを使う球技のように「突然飛んでくるものに反応する」場面はあまりありません。同じ「運動」でも、使う力の組み合わせが球技とはかなり違います。

ダンスと運動神経は「関係ない」と言い切れる?

「ダンスは運動神経と関係ない」と言い切れるかというと、そうではありません。ダンスも体を動かす運動なので、バランスやタイミング、まねる力が得意な子は、最初から動きを覚えるのが早いことがあります。

一方で、言えることもあります。

  • ダンスで使う力の多くは、練習の中で少しずつ身につけていくものです。最初から全部そろっている必要はありません。
  • 足の速さやボール投げの記録は、ダンスの上達とは別のものです。
  • ダンスは勝ち負けや記録で比べるより、昨日の自分と比べて上達を感じやすい習い事です。

「運動神経がないからダンスは無理」と決めてしまう前に、ダンスで使う力の中で、どれが得意でどれが苦手かを見てみると、始めやすさの見え方が変わります。

運動が得意でない子が、ダンスでつまずきやすいところ

運動が得意でない子が、ダンスを始めたばかりのころにつまずきやすいのは、たとえば次のような場面です。

左右が分からなくなる

先生と向かい合って踊るとき、先生の右手は子どもから見ると左側にあります。鏡がある教室でも、左右が入れ替わる感覚に慣れるまでには時間がかかります。

手と足を同時に動かせない

足でステップを踏みながら手を動かす、というように、体の別々の場所を同時に動かす動きは、最初は難しく感じる子が多いものです。

音楽についていけない

速い曲だと、動きを思い出しているうちに音楽が先に進んでしまいます。止まってしまうと、どこから入り直せばいいか分からなくなることもあります。

動きが小さくなる

自信がないと、どうしても動きが小さくなります。間違えるのが恥ずかしくて、手足を縮めて踊ってしまう子もいます。

つまずきの手助け|教室で、家庭で

教室でよく行われる工夫

  • 最初はゆっくりのテンポで、少しずつ速くしていく
  • 足だけ、手だけと分けて練習してから合わせる
  • 動きに「ジャンプ」「くるっ」などの言葉をつけて覚えやすくする
  • 短い部分ずつ覚えて、少しずつつなげていく

文部科学省の中学校向けダンスのリーフレットでも、授業のはじめの段階では、手拍子、スキップ、揺れる、回るなど「誰にでもすぐにできる動き」でリズムに乗ることや、先生が生徒の中に入ってリズムを取って見せることが、手だての例として挙げられています。運動が苦手な子に向けた工夫は、学校の授業でも考えられているのです。

家庭でできること

  • レッスンで覚えた動きを、子どもに「先生役」になって教えてもらう
  • 左右が分からなくなる子には、手首に目印のヘアゴムをつけるなど、目で見て分かる工夫をする
  • 上手にできたかどうかより、「大きく動けたね」「最後まで踊れたね」と、頑張ったところを言葉にする
  • きょうだいや友だちと比べない

ダンスで経験できる「いろいろな動き」

文部科学省の「幼児期運動指針」(平成24年)では、幼児期に身につけたい多様な動きを、次の3つに分けて示しています。

  • 体のバランスをとる動き:立つ、座る、寝ころぶ、起きる、回る、転がる、渡る、ぶら下がるなど
  • 体を移動する動き:歩く、走る、はねる、跳ぶ、登る、下りる、這う、よける、すべるなど
  • 用具などを操作する動き:持つ、運ぶ、投げる、捕る、転がす、蹴る、積む、こぐ、掘る、押す、引くなど

ダンスのレッスンには、回る、跳ぶ、はねる、歩く、止まる、しゃがむ、床に寝ころぶといった動きがたくさん出てきます。特に「体のバランスをとる動き」と「体を移動する動き」は、ダンスの中で何度も経験する動きです。一方で、ボールを投げる・捕る・蹴るといった「用具を操作する動き」は、ダンスではあまり出てきません。ダンスはいろいろな動きを経験できる習い事ですが、すべての動きをカバーするわけではない、ということも知っておくとよいと思います。

同じ指針では、「毎日、合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましい」とされています。この60分は、遊びや散歩、お手伝いなども含めた生活全体の合計です。週に1〜2回の習い事だけで足りるものではないので、習い事は「いろいろな動きを経験する場のひとつ」と考えるのが自然です。

年齢ごとの見方

3才〜6才ごろ

幼児期運動指針では、3歳から4歳ごろは基本的な動きが未熟な初期の段階から、日常生活や遊びを通して動き方が上手になっていく時期、4歳から5歳ごろは友だちと一緒に運動することに楽しさを見いだす時期、5歳から6歳ごろは無駄な動きや力みが少なくなり、動き方が上手になっていく時期とされています。この年代では、運動が得意かどうかを気にするより、音楽に合わせて楽しく体を動かす経験そのものを大切にしたい時期です。

小学生

小学生になると、先生の説明を聞いて理解したり、長めの振り付けを覚えたりできるようになってきます。同時に、友だちと自分を比べて「自分は運動が苦手」と思い始める子も出てきます。ダンスの習い事は、記録や順位をつける場面が少なく、「前の自分よりできるようになった」を目標にしやすい習い事です。

「ダンスで運動神経がよくなる」と言える?

「ダンスを習えば運動神経がよくなる」と言い切れる研究結果を、この記事を書くにあたって確かめることはできませんでした。そのため、「ダンスで運動神経がよくなります」とは書きません。

ただし、関連して確かめられたことはあります。

  • 前に紹介した松本行矢先生は、運動神経は生まれつきだけで決まるものではなく後から伸ばせるとし、特に小学生のころは、いろいろな競技やダンスなど、複合的な動きを経験することが大切だと話しています。また、動画で自分の動きを見て、イメージとの違いを確かめることも勧めています。
  • 幼児期運動指針では、幼児期にいろいろな遊びを通して多様な動きを経験することが大切だとされています。

つまり、ダンスだけで何かが劇的に変わるというより、「いろいろな動きを経験する機会の一つとして、ダンスがある」と考えるのが、確かめられた範囲に沿った見方です。

運動が得意な子にとってのダンス

運動が得意な子にとっても、ダンスには新しい経験があります。球技や陸上では、速く・強く動くことが求められる場面が多いのに対して、ダンスでは、ゆっくり動く、ぴたっと止まる、体の一部だけを動かす、表情をつけるといった動きが求められます。力いっぱい動くことに慣れている子ほど、「ゆっくり、きれいに」に苦戦することもあり、それが新しい挑戦になります。

体験レッスンで見ておきたいこと

  • 初めての子が多いクラスか、経験者が多いクラスか
  • 振り付けを、最初はゆっくり・短く区切って教えているか
  • できない動きがある子に、先生がどんな声をかけているか
  • 上手な子だけが前に出る形になっていないか
  • 子どもが、うまくできなくても楽しそうにしているか

運動が苦手な子ほど、1回目の体験では緊張して本来の様子が見えにくいことがあります。何回か体験できる教室なら、2回目、3回目で表情や動きがどう変わるかも見てみてください。

セントダンススクールのレッスンと「運動が苦手」

セントダンススクールのトップページでは、オススメのお子様として「人見知り、恥ずかしがり屋さん」「集団行動・大人数が苦手」などと並んで「運動が得意じゃない」子を挙げています。キッズクラスのページでも、運動が元々得意な子もいれば全般苦手な子もいる、と成長の幅を前提にしたうえで、一人ひとりの得意・不得意に寄り添って指導する、としています。

レッスンは、体操・ストレッチ、アイソレーション、振り付けの流れで行います。体操・ストレッチでは流行の音楽を流し、リズムに合わせたジャンプや競争など遊びを取り入れながら全身を動かします。振り付けは、先生の動きを真似して、簡単な動きをゆっくり行うところから覚えていきます。

講師紹介ページのインタビューでも、講師の一人のmisaki先生は、できないときは「できてない」と伝えつつ「練習したらできるんだよ」と言葉でフォローすることを意識している、と話しています。

よくある質問

Q. 運動会のかけっこがいつもビリです。ダンスはついていけますか?

A. 足の速さとダンスの上達は別のものです。ダンスで使うのは、音に合わせるタイミングや、先生の動きをまねる力などが中心です。かけっこが苦手でもダンスは楽しい、という子もいます。

Q. ダンスを習えば、ほかのスポーツも上手になりますか?

A. そうなるとは言い切れません。ただ、文部科学省の幼児期運動指針では、幼児期にいろいろな遊びを通して多様な動きを経験することが大切だとされています。ダンスはその機会の一つです。

Q. 体がかたいのですが、大丈夫ですか?

A. 始める時点で体がかたい子は珍しくありません。セントダンススクールのレッスンも、体操・ストレッチから始まります。痛いところまで無理に伸ばさず、少しずつ続けていけば大丈夫です。

Q. 不器用で、手と足を一緒に動かせません。

A. 始めたばかりのころは多くの子がそうです。足だけ、手だけと分けて練習してから合わせると、少しずつできるようになっていきます。

Q. 「運動神経が悪い」と子ども自身が言っています。

A. 「運動神経」は、もともとは神経の名前で、日常では「体をうまく動かす力」全体を指す言葉です。走る・投げる・まねる・リズムに合わせるなど中身はいろいろあります。「全部が苦手」と決めずに、「何が得意か」を一緒に探してみるのがおすすめです。

Q. 何歳から始めるのがいいですか?

A. 教室によって違いますが、3才ごろから通えるクラスもあります。小学生から始めても遅くはありません。年齢より、子どもが楽しめるかどうかを体験で確かめるのがいちばんです。

参考にした資料

  • コトバンク「運動神経」(精選版 日本国語大辞典、デジタル大辞泉)
  • HugKum「『運動神経』に良し悪しはない? 筋肉へ司令を届ける伝達係のひみつに迫る」
  • テレメール進学サイト 学問紹介「運動神経は才能じゃない『イメージ通りに動ける力』を解明する」(聖カタリナ大学 松本行矢先生)
  • 文部科学省「幼児期運動指針」(平成24年3月)
  • 文部科学省「中学校向け『ダンス』リーフレット」(現代的なリズムのダンス)

セントダンススクールのご案内

西宮市津門のセントダンススクールには、3才〜6才のリトルクラスと、小学生のキッズクラスがあります。レッスンでは、ジャンルを問わず、体操・ストレッチ、ダンスの基礎となるアイソレーション、振り付けの流れで、音楽に合わせて体を動かす楽しさを大切にしています。ダンスが初めてのお子様、人見知りのお子様、運動が苦手なお子様も通っています。

  • レッスン:月曜日・水曜日の夕方(リトル 15:50〜16:40/キッズ 16:50〜17:40)
  • 体験レッスン:無料で3回まで受けられます
  • アクセス:阪急「阪神国道」駅から西へ徒歩2分、JR「西宮」駅から東へ徒歩6分、阪神「今津」駅から北へ徒歩10分(兵庫県西宮市津門稲荷町5-10 フレクサンス北今津 3階)

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